寒い北欧の森は、たくさんの針葉樹林が細く長くそびえ立っている。
曲がらず枝分かれもせず、真っすぐ一本で、一直線に伸びている。
日本の木のようにどっしり構えている木と違い、
きっと脆く繊細だけれど、凛としていて。
北欧の曲は小曲が多く、他のヨーロッパの作曲家のように大規模編成の交響曲、協奏曲、超絶技巧の作品は決して多くはない。
演奏会でなかなか登場しない曲も多いけれど、
小品だからこそ短い間の中に凝縮されていて、
たくさん素敵な響きがつまっている。
これらの作品はきっと厳しく暗く、長い冬を経験した者でなければ生み出す事は出来ないだろうし、これらの作品を演奏するにも、曲を理解して練習するだけでは、この作品に欠かせない音色を作り出すのは難しい。北欧の作品を初めて耳にしたときは、背筋がひんやりするような、魂が抜けるような、そんな感覚になったのだ。
春がこんなにも待ち遠しくなるなんて、ノルウェーに来る前は思ってもいなかった。まだ雪が残っているというのに、待ちわびていた春の訪れをかすかに感じた瞬間に喜びがあふれる。まるで積もっていた雪の下に自分達の感情までも埋まっていたんじゃないかと思うくらい、春になると人々が活発になっていく。
それはきっと人間だけでなく、草木も一緒なんだと、新緑の香りが漂う道を歩きながら思う。
生命の息吹を感じる。
そして、短い夏を思い切り味わう。
北欧の作品に春や初夏の曲が多いのは、こういった厳しい自然や気候が背景にあるのだろう。